祝辞03


このたび 桂 蝶六さんが、戦後途絶えていた 桂 花團治の名跡を七十年ぶりに復活されることになりました。声に出してみるとわかりますが、こんな華やかないい名跡が埋もれていたのが信じられない思いです。このたびの襲名披露は、上方落語界のためにも喜ばしく、誠におめでたいイベントであります。

蝶六さんは、二代目 桂春蝶さんの最後の弟子で、春蝶師とは私が朝日放送のテレビプロデューサーだった四十年前、上方落語の若手を売り出すための番組づくりで毎週顔を合わせ、共に苦労した仲でした。師は特に時代感覚が鋭くて、私が東京で笑いの番組づくりを手がけた時、何度か出演を要請したのですが、「箱根から東には魔物がいるので」とのことで、最後まで大阪にこだわられていました。かつて春蝶師に入れこんだことのある私としては、その弟子である蝶六さんと春團治一門のご活躍はこの上なくうれしいことです。

加えて蝶六さんには、いま私が校長をしている放送芸術学院専門学校の講師として、十八年もの間、学生の面倒をみてもらっている恩義があるのです。大きな名前をいただいたことで、ますます大物感のある落語家になってほしいという期待をこめて、蝶六から花團治になるこれからに声援を贈り続けたいと思います。

メディア・プロデューサー 澤 田 隆 治